東洋医学(中医学)の肝(肝臓)の作用・働きと不調による症状

肝とは西洋医学で言うと肝臓と同じです。しかし、西洋医学の肝臓と東洋医学(中医学)の肝の働きや作用は解釈が異なります。こちらの記事では、東洋医学(中医学)の肝の作用と働き、そして不調になるとどのような症状が現れるかを説明致します。

①肝の大事な働きは疏泄作用(そせつさよう)

疏泄とは全身の氣(中医学の氣とは生命エネルギーを示します。)を調節する機能です。また肝は肺と共に氣の調整をします。肝は氣の上昇性があり、肺は粛降作用(下げる働き)があるので、肝の上昇性と肺の粛降作用で、氣のバランスをとろうとします。氣のバランスが整うと、血の流れも正常を保てるので、脾や胃もしっかりと働く事ができます。

②疏泄作用を失調する原因

上記で疏泄作用の事を述べましたが、その疏泄作用を失調してしまう原因は、主に、感情の乱れと情志(情とは怒・喜・思・悲・憂・恐・驚の七情、志とは怒・喜・思・憂・恐の五志)が抑鬱される場合です。特に、肝は怒りやストレスなどの感情の影響を受けると疏泄作用が失調します。

肝の疏泄作用が失調すると何が起こる?

肝の疏泄作用が失調すると、氣の巡りが悪くなり、体内に肝氣が過剰になるため(この事をを肝氣鬱結{かんきうっけつ}という。)、下記の様な症状が身体に現れます。

イライラ・怒りっぽい・胸の苦しさ・つれるような痛み・月経不調・悪心・嘔吐・食欲低下・消火不良・腹痛・下痢・吐き気・黄疸・耳鳴り

③肝のもう一つ重要な働きとは蔵血作用(ぞうけつさよう)

上記は肝の疏泄作用を述べました。次に、肝の重要な役割である、蔵血作用を述べます。

蔵血作用とは、肝は血脈(西洋医学でいう血管)の血液量を調節し、心が血脈の血液を推動します。簡単に言うと、肝が血液の量を調節し、心の力が肝に決められた血液量を身体全体に運ぶという事です。心と肝のバランスによって、身体全体の血液循環が正常化するといえます。

④蔵血作用に不調が起こるとどうなる?

蔵血作用には血流量の調節とあともう一つ作用があります。それは、血の貯蔵です。寝ようと横になると、多量の血が肝に集められ貯蔵されることによって、心神(しんしん)が安定し、眠くなります。そして、起きて活動を始めると肝の血が腕や足にめぐります。このバランスを崩すと、下記の様な不調が生じます。

頭痛・めまい・耳鳴り・顔面蒼白・難聴・月経異常

⑤肝血虚による症状とは?

肝血虚とは、肝の血が不足している状態を示します。多い原因としては、肝に負担をかける事によって、肝の血を消耗してしまう事です。そして、肝血は他の内臓器や筋肉、爪、目、髪、皮膚にも栄養を与えるため、肝血虚になると下記の様な不調が生じます。

  • 心に影響が及ぶと、心神の異常(具体的に不眠症や夢を多く見る。)
  • 目に影響が及ぶと、目のかすみ、乾燥、異物感、疲れ目
  • 腎に影響が及ぶと、下肢の冷え性・だるさ、髪が抜ける・パサつきがでる、耳鳴り、頭痛
  • 筋に影響が及ぶと、全身の筋肉の緊張、筋力低下、慢性的な筋肉の緊張による痛みやしびれ
  • 皮膚に影響が及ぶと、皮膚の乾燥
  • 爪に影響が及ぶと、爪の変形や割れやすい

肝のまとめ

肝は疏泄作用と蔵血作用が主な働きであります。

肝は様々な臓器、皮膚、目、筋、髪と関連があるため、肝に不調が起こると様々な症状が出現します。

心と関連が深いため、心に不調が起こると、必然的に肝に不調が起こります。

肝に不調が起こると肝臓の病気・椎間板ヘルニア・捻挫・打撲・関節痛・腱の損傷・眼疾患・右肩こり・膝の内外痛・股関節痛・イライラ・偏頭痛・パーキンソン病・メニエール病・リウマチ・アトピー性皮膚炎・胆石・神経性胃炎・消化不良・月経異常・うつ病・自律神経失調症・更年期・高血圧・不眠・耳鳴り・めまい・認知症・便秘・腰痛などの症状が出現する可能性があります。

五行論(自然界に存在する全てのものを5つに分類して考える事。)で肝は下記の表に記載してある事と関連が深いとされています。

 五行 解説
五臓
肝に対する腑
肝が支配する感覚器
肝のつかさどる器官
肝が病んだ際に変化がある分泌液
肝の変調が現れる部位
肝に宿る精神
肝が属する季節
肝が嫌う外気
肝を病みやすくする動作 行とは、沢山歩く事。
肝不調に際の皮膚の色
肝変調の際の感情
肝変調に現れやすい部位 握とは、筋の緊張。
肝変調時に見られる症状 語とは、よく話す事。
肝変調時の体臭、口臭 臊とは、あぶらくさい事。
肝変調した時に好む味 酸とは、酸っぱい事。
肝変調した時の声 呼とは、呼ぶ、怒鳴る事。
肝を補う果物 李とは、すももの事。
肝を補う野菜 韮とは、ニラの事。
肝を補う穀物
肝を補う肉
肝が属する経絡 足厥陰 氣・血・津液の流れる通り道

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